労働組合と連携し、短期間で高額解決金での事件解決

[コラム] 2016/07/08

小売店に5年以上勤めるAさんは現場のリーダー格として真面目に働いていましたが、ある日、会社の方針についてほんの少し意見をしたことをきっかけに、社長から会社にくるなと命じられてしまいました。

Aさんは自分が辞めなければならない理由はないと抗議したのですが、給料の支払いを一方的に止められ、給料の1か月分ほどを支払うので退職するようにと迫られました。私が受任して、給料仮払いの仮処分を申し立てました。相手方はAさんが今でも社員であることは認めたのですが、勝手に休んでいただけとして、給料の支払いに応じず、出社を命じました。退職に応じるのであれば月給の4か月分程を支払うとの提案もあったのですが、Aさんは社長の横暴なやり方に愛想が尽きていたのですが、長年貢献してきたと自負していた会社をこの程度の金額で追い出される形で退職するのは納得できないと会社に戻ることにしました。

Aさんは会社に戻りましたが、案の定、以前の仕事から外されて一人倉庫係とされてしまいました。あらかじめ会社の対応を予想していた私はAさんを一人でもはいれる労働組合(個人加盟ユニオン)に加盟してもらい、復職命令が出されるのとほぼ同時に団体交渉を申し入れました。団体交渉の席では会社側は不誠実な回答しかなかったようですが、店舗の前で抗議活動を行うと警告するなどしたところ、数日後に会社側から私宛に、こちらの当初の提案(月給の1年分強)をほぼ丸のみする形での和解の提示があり、退職和解となりました。申立から3か月ほどで1年分を超える解決金は零細企業の場合においては、かなり高額な解決となりました。

会社との交渉を有利に進めていく上では、裁判は大きな武器ですが、労働組合のバックアップがあればより有利に交渉を進めていくことができます。

弁護士 増田崇