「固定残業代」にご注意ください!
[コラム] 2016/08/22
会社が、残業代の支払を少しでも少なくするために、「固定残業代」を導入するケースが増えています。
通常、残業代は、残業をした分に応じて支払われますが、「固定残業代」は、一定額の残業代しか支払われません。
例えば、契約書や求人広告に、「基本給15万円、残業手当5万円」などと書かれていたら、この「残業手当5万円」が「固定残業代」にあたり、どんなに多く残業しても、残業代は一律5万円という扱いになっています。
あるいは、基本給に残業代が含まれており、残業を一定時間以上行えば1時間ごとの残業代を支払うが、一定時間までは「固定残業代」として低額の残業代しか支払われず、残業時間が少ない場合は基本給を減額するというケースもあるようです(テックジャパン事件判決 最判平成24年3月8日)。
求人広告で、給与の金額に「固定残業代」が含まれており、実際に働いてみたら広告どおりの給与ではなかったという事態も見受けられますので、求職中の方は特に気を付けてください。
この「固定残業代」は大半のケースで違法とされています。
原則論になりますが、会社は労働者を一日8時間、週40時間を超えて働かせてはならず(労基法32条)、避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合や三六協定を締結した場合は例外的に、労働者に対して、時間外労働をさせることができ、残業代を支払わなければなりません(労基法37条)。
このルールは強行法規であり、違反した会社に対する罰則が設けられています(労基法119条1号)ので、このルールに違反しているかが明確に判断できるようになっていなければなりません。
具体的には、「固定残業代」の部分が他の賃金の部分と明確に区別されており、また、その部分に何時間分の時間外労働に相当する残業代が含まれているかが明確である必要があります。
決められた時間を超える時間外労働がなされた場合は、その時間に応じた残業代が支払われなければなりません。
そのため、単に残業手当として一定額の手当てを設けて、いくら働いても一定額の「固定残業代」しか支払われない制度は違法となります。
また、基本給の中に「固定残業代」を組み込み、一定時間勤務すれば基本給のとおりに支払うという制度は、基本給と残業代の区別が明確ではないため、違法です。
賃金と労働時間のルールを潜脱して、労働者の賃金を減らす「固定残業代」の大半は違法なものばかりです。
「固定残業代」に心当たりのある方は、ぜひ一度労働弁護団にご相談ください。
弁護士 緒方蘭