変わらなければならないのはあなただ(エイベックスの社長のコメントに思う)

[コラム] 2016/12/24

エイベックスの社長が、社員に違法な長時間労働をさせていたとして、三田労働基準監督署から是正勧告を受けたことについて、「今の働き方を無視する様な取り締まりを行っていると言わざるを得ない」「法律が現状と全く合っていないのではないか」「好きで仕事をやっている人に対しての労働時間だけの抑制は絶対に望まない」「僕らの業界はそういう人の“夢中”から世の中を感動させるものが生まれる」と述べたそうです。(スポニチアネックス 12/23(金) )

時々聞く話で、大手証券会社に勤務する私の先輩も、「働きたいと言っているのに、働くなというのはおかしい。」と言っています。

でも、はたしてそうでしょうか。

残業代を払っていなかったら、どうでしょう。本人が「残業代なんて入らない」と言ったら、払わずに働かせて(勝手に働いて?)よいのでしょうか。一人でもそのような社員がいたら、周りもそれに従わないといけないという雰囲気になっていきますよね。社長から「あいつは残業代なしで働いてるぞ」と言われかねません。ただ働きを蔓延させる悪い風習と言わざるをえないでしょう。

では、残業代を払っていればよいのでしょうか。でも、やはり「あいつは長時間働いてるぞ」と社長から言われますよね。言われなくても、同じように長時間労働をしないといけない雰囲気になっていくでしょう。そして、長時間労働をして「成果」をあげた社員が評価され、家庭責任をきちんと担っている社員が「成果」が低いとして評価されなくなるでしょう。

これは現在の日本企業の悪しき「文化」なのではないでしょうか。この悪しき「企業文化」が電通の悲劇を生み出したと私は思っています。ワークライフバランスを無視した「夢中」は評価しない、ワークライフバランスがとれた中で「感動させるものを生み出す」人を評価する、そういう世の中を目指しているのだと思います。

変わるべきはあなたの方だと思います。

弁護士 水野英樹