ユニオンと連携して、短期間で高額の解決金を獲得
[News] 2016/08/22
和服の販売とレンタルの会社に5年以上に販売員として勤めるAさんは現場のリーダー格として役職も付き真面目に働いていましたが、ある日、一番の繁忙時期である卒業式などを控えた時期の休日の営業時間中に事務所の模様替えを行ったことに対して(通常は男性社員も休日は販売を手伝うことになっていたが、男性社員の手伝いがなかったため人手が足りずお客様を待たせる場面が多々あった。)、なぜこの日に行わなければならないのかちゃんと説明してほしいと、会社の方針についてほんの些細な点に意見をしたことをきっかけに、社長から会社にくるなと命じられてしまいました。
Aさんは労働基準監督署などに相談し、自分が辞めなければならない理由はない、復職させろと再三にわたって口頭や文書で抗議したのですが、給料の支払いを一方的に止められ、給料の1か月分ほどを支払うので退職するようにと迫られました。私が労働弁護団のホットラインを経由して相談を受けました。Aさんは同僚との人間関係も良好で、同僚から戻ってきてほしいとメールで連絡を受けるなどしていたこともあり、納得いく金額の提示があるならともかく、そうでなければ戻りたいと言っていました。解雇等の場合は労働審判を使うことが一般的には多いのですが、Aさんが復職も考えているとのことであったため、早期の復職や退職前提でも労働審判よりも高水準の解決がされることの多い給料仮払いの仮処分を申し立てました。相手方はAさんが今でも社員であることは認めたのですが、勝手に休んでいただけとして、給料の支払いに応じず、出社を命じました。退職に応じるのであれば月給の4か月分程を支払うとの提案もありました(こちら側は月給の2年分を当初提案、その後1年半分に減額して提案)。裁判所が同居しているAさんの父親の資産関係について仮処分の要件になるとして提出するよう求めていたことなどから第1回期日が開かれるまで申立から2か月ほど経過しており、仲の良かった複数の後輩がAさんが追い出されてから退職してしまっていたこともあり、その間Aさんの復職したいとの気持ちは大分萎えていたのですが、長年貢献してきたと自負していた会社をこの程度の金額で追い出される形で退職するのは納得できないと会社に戻ることにしました。
Aさんは会社に戻りましたが、案の定、以前の仕事から外されて販売から大した仕事もなく、前任者もいないたった一人の倉庫係とされてしまいました。あらかじめ会社の対応を予想していた私はAさんに普段から付き合いのあった連合系の個人加盟ユニオンに加盟してもらい、復職の具体的な日付が決まるのとほぼ同時に団体交渉を申し入れました。団体交渉の席では不当な配点や、着替え時間の残業代未払いなどについて、改善を申し入れました。会社側は問題ないの一点張りで具体的な理由も示さずに拒絶するばかりの不誠実な対応しかなかったようですが、店舗の前で抗議活動を行うと警告するなどしたところ、数日後に会社側から私宛に、こちらの提案をほぼ丸のみする形での和解の提示があり、退職和解となりました。申立から3か月ほどで1年分を超える解決金は零細企業であることを考えるとかなり高額な解決となりました。
なかなか会社に戻ることには二の足を踏むことが多い解雇などで職場を追い出された労働者が多い中、Aさんはかなり弱気になる場面もありましたが、私とユニオンの専従でAさんを励ますことで、最後まで戦い続けることができました。労働事件を戦う上で、本人の力と、労働組合の力の重要性を改めて実感しました。
弁護士 増田 崇