名ばかり取締役の解雇事件で提訴しました
[News] 2017/07/31
7月6日に雇用関係の確認と給料の支払いを求めて貸し切りバス事業を営むINNOVATION観光自動車株式会社(以下「会社」という。)を東京地裁立川支部に提訴しました。
私の依頼者(60台女性)常務取締役兼総務経理統括部長という肩書で勤務していましたが、平成28年6月に会社の前社長と親会社との間で紛争が起き、前社長から誘われて入社したからという理由で解雇されました。依頼者は再三にわたって会社に抗議しましたが、取締役の解任は株主総会の裁量であるとの回答が返ってくるだけでした。そのため、依頼者が労働者に過ぎず適法な解雇理由はないとして訴訟提起しました。
労働基準法や労働契約法が適用されるかは、就労実態で判断し、名目が雇用契約でなければ労働法が適用されないということではありません。これは、名目で判断するとなると容易に労働法の規制を脱法することが可能となってしまうため、与えられた権限、時間的場所的な拘束の有無、経営者としてふさわしい待遇の有無など就労実態で労働法が適用されるか判断することになっているのです。
依頼者は、常務取締役という肩書こそ有していたものの平取締役でした。平取締役は取締役会の一員として議論と決議に参加するだけで、代表権がない以上、業務を遂行できる権限が会社法上与えられているわけではありません。平取締役が取締役会に参加する以外の業務遂行していた場合はそれは従業員としての地位に基づき権限が与えられたからであると通常判断されます。また、業務内容も日常的な運行管理業務をしていただけで、車両の購入や人員の採用など経営の中核には全く関わっていませんでした。しかも、給料は退職時点では一方的に減額され20万円を少し超える程度で大半のドライバーすら下回るという状況でしたので、取締役との会社の主張が認められることはまずないと思われます。
弁護士 増田崇